Photo by Ryo Tokuda
昨年に続き今年も、7月7日に専修大学の「専修リーダーシップ開発プログラム」で「ダイバーシティ・リーダーシップ」の講義をさせていただきました。
同プログラムの目的は、学部生が、卒業後、組織や社会を牽引する人材として活躍するために必要な「リーダーシップ」の基礎を体得すること。受講は公募制で、学年・学部を問わず広く希望者を募ります。そのうえで、書類選考と面接を通じて受講生を決定します。期間は、4月~12月までの8ヶ月間。この間、毎週の講座での学習があり、それに加えてチームでの課外の実践活動もあります。
講師は、同校の先生に加えて、外部専門家やリーダーとして活躍するビジネスパーソンが担当。内容は、ロジカルシンキングやプレゼンテーション、自己理解・他者理解などの基礎スキルから始まり、複数の切り口から「リーダーシップのあり方」を学ぶという流れになっています。私は、「多様性を活かすリーダーシップのあり方」というテーマで講義を担当しました。
今回の受講生は、学部・学年混合の29名。昨年と比較すると今年の受講生の特徴は次の2点です。まさに「ダイバーシティ」の度合いが増したという印象です。
女子の参加比率が増加したこと
昨年は日本人のみだったのが、今年は、韓国、中国からの留学生もいて、クラスの多様性も一層豊かになったこと
私の授業の内容は、「ダイバーシティが組織に与える影響」と「多様なメンバーで構成される組織で、個々の力を最大限に引き出すリーダーシップのあり方」の二つ。講義によるインプットに加え、グループ討議を採り入れた参加型で行いました。
まず開講直後に印象的だったのは、「手があがる速さ」と「あがる手の数」です。「書記をやってくれる人いますか?」というと、大半の学生がすぐに手をあげます。「発表したいグループは?」というと、すべてのグループが手をあげます。自ら希望して応募してきただけあって、待ちや受け身ではない、攻めの積極性を感じました。
また、グループ討議であげられるアイディアの数の多さにも感心しました。例えば、「10カ国の人からなるプロジェクトチームを率いるリーダーとして予想される困難をあげてください」という質問に対し、6つのグループに順に一つずつあげてもらいました。2周くらいで答えが尽きると思っていたのですが、尽きることがなく途中で止めるほどでした。「体感温度の違いによる部屋の温度設定」という回答もありました(確かに!)。健全な競争心と柔軟な発想があるからでしょうか。もっといろいろなお題をふって、彼らの考えをきいてみたかったです。
うれしいことに、受講生から多くの質問が寄せられました。例えば、次のようなものです;
「やる気がない人を巻き込むにはどうしたらよいか?」
「感情的な人に態度を改めてもらうにはどうしたらよいか?」
「リーダーとして、チーム内のいじめやハラスメントにどう対処すればよいか?」
これらの質問は、私が企業向けに行っている研修で出てくる質問ととてもよく似ています。推測するに、学生がアルバイト、部活、グループワークなど、自らが属する組織や集団の中で抱える悩みは、職場における社会人の悩みと本質的には変わらないようです。私からはひとつひとつの質問について、実践的なアドバイスをしました。
講義でも触れましたが、これらの悩み全般に対する私の考えは次のようなものです。学生の間は、居心地の悪い場所を避けたり、そこから抜け出したりすることができるかもしれません。しかし、逃げたところで、解決策を見つける努力を先送りにしているだけで、社会人になれば職場で同じような壁に直面する可能性が大いにあります。リーダーを目指す学生の方々には、解決策を先取りして学ぶという意味で、逃げ出さずに「今そこにある」問題に試行錯誤を繰り返しながら対峙してほしいと思います。
一方、社会人からは出てこない新鮮な発言もありました。「日本は男女の格差がある国だと思う人?」と尋ねると数名が手をあげました。「どのようなところで格差があると実感しますか?」ときくと、「女性専用車両や映画館のレディースデイがあるので、女性のほうが優遇されていると感じます」とのこと。この発言をうけて、私自身が「男女格差がある=男性が優遇されている」という無意識の固定観念をもっていたことに気づかされました。自分と異なる人の視点に触れ、自らの固定観念に気づくという、ダイバーシティの効用をまさに体感しました。
講義の最後に、私からみなさんに次のようなメッセージをお贈りしました;
「自分と異なる人と接することは、心地悪いこと。心地悪さを乗り越えなければダイバーシティの中でリーダーシップをすることはできない。今自信がなくても大丈夫!失敗を恐れずに経験を積んでください」
2016年7月9日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
近藤美樹
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