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2016年~2017年にかけて、6回に渡ってブログに「女性の活躍推進企業データベース分析」を掲載してきました。今回、4年ぶりに分析を行い、興味深い結果が得られたので、2回に分けてお届けします。
① 「課長の壁」(本ブログ)
② 「伸び盛り業種はどこ?」(次回ブログ)
これまで通り、今回も厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に登録されている従業員1,001人以上の大企業を対象に分析を行っています。今回は初めて、「女性係長比率」を導入し、従来の「女性従業員比率」、「女性管理職比率」と合わせて3つの変数を扱いました。3つの数字を公表している679社が対象です。
【分析結果】
679社単純平均値 (%)
● 女性従業員比率:28.6
● 女性係長比率: 20.6
● 女性管理職比率: 9.9
これらの数字を使って、割り算をします。
● 女性管理職比率 ÷ 女性従業員比率 = 35%
● 女性係長比率 ÷ 女性従業員比率 = 72%
● 女性管理職比率 ÷ 女性係長比率 = 48%
女性管理職比率 ÷ 女性従業員比率 = (女性係長比率 ÷ 女性従業員比率)
掛ける (女性管理職比率 ÷ 女性係長比率)
ですので、計算結果を下の表にまとめることができます。
2021年6月28日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
徳田亮
「課長の壁」:経営視点から斬る「女性の活躍推進企業データベース分析」2021年版①
下の行のパーセンテージは、分子が分母よりどのくらい(の割合で)小さいか、を示しています。女性の登用という観点からは、大きければ大きいほど登用が進んでいるということになります。例えば、一番左の「女性管理職比率/女性従業員比率」の例では、女性管理職比率と女性従業員比率が同一であれば100%ということになり、男女が同じ割合で管理職に登用されているということになります。100%を下回る度合いが大きくなればなるほど、女性が登用される割合が低くなっているということになります。
「女性管理職比率/女性従業員比率」が35%であることの意味:女性従業員比率は28.6%です。男女同比率で管理職に昇進する場合、女性管理職比率は28.6%になるはずです。ところが実際の女性管理職比率9.9%です。35%という低い数字が意味するところは、女性従業員比率と同じ28.6%で昇格した場合に比べて、9.9%の場合は、35%(約3分の1)の人数の女性しか昇進していない、ということです。
今回、女性係長比率を導入してわかったことは、「女性管理職比率/女性係長比率」の48%と「女性係長比率/女性従業員比率」の72%に、1.5倍もの差があるということです。つまり、係長まではある程度女性が登用されているが、管理職つまり課長昇進段階で壁にぶつかっているということです。よく欧米企業ではエクゼクティブレベルで男女格差があり、日本では中間管理職レベルで男女格差がある、と言われますが、今回日本での壁の位置がより明確に特定できたかもしれません。
なぜ係長までは格差が相対的に少ないのでしょうか? いくつか原因仮説を立ててみました。
そもそも「係長」の定義が曖昧で企業側が人数を広めにすくっている
「係長」までは年功序列的に半ば自動的に上げている
優秀な女性を従来よりも積極的に採用するようになってきている
若い世代の優秀な人材が、結婚、出産で退職するケースが減ってきている
今後これらの仮説を検証していきたいと思います。なお、女性の管理職登用の難しさについては、過去のブログでもしばしば言及しているので、ここでは触れないでおきます。(例えば、2016年7月15日付のブログ『経営視点から斬る「女性の活躍推進企業データベース分析」業界比較④』などをご参照ください)
「課長の壁」をよりビジュアルにお見せするために、散布図を掲載しておきます。グラフからは次のことが読み取れます。
1番目(「女性従業員比率×女性管理職比率」)と3番目(「女性係長比率×女性管理職比率」)のグラフの形が似ている。傾向線の傾きが0.5259、0.533と近い数字になっており、45度線(男女の登用比率が等しいライン)から乖離している。これらは、「課長の壁」の存在を示唆している
2番目のグラフ(「女性従業員比率×女性係長比率」)だけが異なる形状となっている。1番目、3番目のグラフと比べると、傾向線の傾きが0.7646と比較的立っており、45度線(男女の登用比率が等しいライン)に比較的近づいている。これは、係長までは、女性の登用が比較的できていることを示唆している
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Value&Vision の徳田亮と近藤美樹がグローバルリーダー育成、ダイバーシティ&インクルージョン推進、女性リーダー育成、経営コンサルティングなどに関する内容を、エッセイ、分析、対談など、さまざまな形式で綴ってゆきます。