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前回は、従業員1,001人以上の大企業を対象に、正社員における女性管理職比率の過去1年間の伸びを見ました。切り口は「2016年の女性管理職比率」でした。今回は同じ分析を「業界(粗い網の11業界)」という切り口で行います。
【分析結果】
まず、伸びの分析の前に、2016年の女性管理職比率がどのようになっていたのか、業界別に見てみます。
2017年7月17日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
徳田亮
経営視点から斬る「女性の活躍推進企業データベース分析」女性管理職比率2016対2017②
縦軸が2016年女性管理職比率です。5つのレンジに分けてあります。上部「濃赤」部分が政府の掲げている2020年までの達成目標、30%をすでに満たしている企業です。前回も申し上げましたが、2016年時点では全体の4%に留まっています。非製造業に偏っていることもわかります。
横軸が業界(粗い網の11業界)で、「濃赤+赤+濃桃」の長い順、つまり女性管理職が5%以上いる企業の割合の高い順に左から並べてあります。業界名が緑の業界が「低比率グループ」となります。これら5業界においては、「濃赤」と「赤」がなく、「濃桃」が極端に低くなっています。今回は特に、この緑の低比率グループに着目して伸び分析の結果を見てみたいと思います。
下は、縦軸が前回①の分析と同じ過去1年間の女性管理職比率の伸びです。横軸が「業界」に代わっています。「濃緑」+「薄緑」の合計部分がプラスの伸びの企業です。緑の合計の大きな順に左から並べてあります。緑の文字が低比率グループの5業界です。
分析からは次のようなことが読み取れます。
建設、電気ガスでは、プラスを示した企業の割合が、業界別1位と3位です。値は、それぞれ43%、36%となっています。濃緑がなく1ポイント以上伸ばした企業はゼロですが、それにしても女性管理職比率において躍進した業界、と言えます。
それに次ぐのが電気精密機器製造です。やはり濃緑部分は少ないものの、26%の企業がプラス成長となっています。
プラス成長の企業が少なかったのは、機械・輸送機器製造と素材製造です。緑部分合計が少なく、それぞれ17%、16%にとどまっています。また、濃緑も極端に少なく(素材製造はゼロ)、1ポイント以上伸ばした企業はほとんどありません。
同じ低比率業界でも、業界によって、変化のスピードが異なるのは面白い発見でした。今回は定量分析のみに留まっているので、「建設、電気ガス」と「機械・輸送機器製造、素材製造」とは何が異なるのか、について定性的な説明を加えることができません。あえて推測で言えば、「建設、電気ガス」は公共性が強い業界なので、業界内の1/3以上の企業で、経営が政府の「女性活躍推進」の号令をより真摯に受け止め、早期にアクションを起こしたのかもしれません。
ただし、「機械・輸送機器製造、素材製造」は押しなべて女性活躍推進に熱心ではない、とは言えません。事実、このグループにはValue & Visionのクライアントが何社か含まれており、いずれも経営が女性の活躍を強力に後押ししています。まだ数字面で顕著な変化は見られないかもしれませんが、地道な活動がある臨界量に達した時、加速度的に女性管理職数も増えるのではないか、と考えられます。
なお、「低比率の企業はどのようにすれば、女性管理職比率を上げることができるか?」、この課題については、Value & Visionの考え方を『「女性の活躍推進企業データベース分析」業界比較④』で述べています。ご興味があれば、そちらをご参照ください。
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