前回のブログでは、「なんちゃってプレゼン」の具体例をご紹介しました。では、なぜ、そのような「なんちゃってプレゼン」が横行するのでしょうか? Value&Visionでは、その根本の理由は、そもそも、「プレゼン資料」と「説明資料」の区別ができていないからではないか、と考えています。前回挙げた『プレゼン資料の作成上の特徴1:「情報のテンコ盛り」』や『プレゼンテーション(発表)の特徴:「スライドごとの説明のパッチワーク」』はまさしくその例です。
同じく前回挙げた『プレゼン資料の作成上の特徴2:「安易なビジュアル化」』では、一見両者の区別ができているように見えます。しかし、「プレゼン資料」の本質を理解せずうわべの見せ方を変えるのみ、という点では、「区別ができていない」とも言えるでしょう。
本ブログで言う「マインドセット」とは、「プレゼン資料」と「説明資料」の区別をきちんと理解すること、と定義できます。
「説明資料」とは、社内外の会議の際に配布される資料の総称です。典型的な対象は、業績の現状や見通し、案件の進捗状況などです。また、新規案件の審議なども含まれます。通常、会社が決めた一定のフォーマットに従って作成されており、たくさんの字や数字が並んでいるのが特徴です。
「説明資料」に対し「プレゼン資料」が異なる対象を扱っているわけではありません。例えば、前述の業績や新規案件などを「プレゼン資料」で表現することも可能です。では、両者で何が異なるか、というと「伝達の流儀」だと考えます。プレゼンやプレゼン資料作成に熟達するには、まずこの違いを知ることが大事です。
報告資料とプレゼン資料を対比して「伝達の流儀」を考えてみましょう。冒頭の対照表をご覧ください。
大きな違いは、資料としゃべりの役割の差です。報告資料では資料が主で、しゃべり=音声でその内容を補足する、という関係ですが、プレゼンではしゃべりが主です。Value&Visionは研修の中で、プレゼンをよく「紙芝居」にたとえます。演者は背景としての「紙」を説明するわけではありません。紙は語りの一部を切り取ったもので、しゃべりにリアリティや具体性を付加するものです。
プレゼン資料はじっくり「読む」ものではなく、投影時間5秒間で「見る」ものです。従い、一瞬のインパクトが大事になります。インパクトを出すには、ワンスライド・ワンメッセージというシンプルな構成が必須であり、グラフや表など、右脳に働きかけるビジュアル表現も大事になります。また、一般にプレゼン資料では、話し手の解釈(=メッセージ)を提示するのに対し、報告資料では数字や事実を数多く提示する中で、聞き手に解釈をゆだねることもしばしばあります(余談ですが、日本の会議が長引く理由のひとつは、本筋とは関係のない数字や記述に上司の意識と質問が拡散してしまうことだと思っています)。
プレゼンでは、紙芝居同様、しゃべりが「ストーリー」を展開します。それはよどみのない「流れ」です。スライド1枚1枚で止まることはありません。報告資料では、資料主体で、1枚ごとに止まって説明します。しばしばポインターで、スライドのある一部分を指して説明します。静止状態のまま一部がクローズアップされるイメージです。
Value&Visionでは、講義の中で、プレゼンにおいては流れを止めるような行為は極力慎むように推奨しています。例えば、多くの企業で慣行になっている次の2つのことにも異を唱えています。
スライドの解説が終わるたびに「次!」という合図を出し、アシスタントにスライドを一枚先に送らせること
レーザーポインターを使用すること
両方の行為とも「説明」に適した行為かもしれませんが、プレゼンの流れを作るうえではマイナスです。また、レーザーポインターに関しては、緊張してプレゼンする場合、光をスクリーンの上でミズスマシが水面を滑るようにくるくる回し、見ている方が目をまわすということも良く起こります。この意味でも、極力レーザーポインターは使わないように、と指導しています。
「報告資料」の作成や使用そのものを否定するつもりはありません。大事なことは、「報告資料」と「プレゼン資料」を使い分けることです。私の知る限り、グローバルではこれら2つを使い分けるのは当り前のことです。また、現在発表や共有化を「報告資料」で行っているなら、「プレゼン資料」を用いることで、もっと会議が活性化できたり、効率化できたりする余地もあるはずです。
まず、「報告資料」と「プレゼン資料」の「伝達の流儀」の違いをしっかり理解してください。そのうえで、自ら手を挙げてプレゼンの機会をつかみ、場数を重ねて言ってください。場数を重ねるなかでは、先の2つのブログ、「プレゼン資料作成の基本 パート1&パート2」も是非参考にしてみてください。パート1は脱「なんちゃってプレゼン」のスプリングボードになると思います。パート2はある程度場数を積んだ後、じわっと身に染みてくるはずです。
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2017年6月1日
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コラム
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徳田亮
プレゼンのうまい人とへたな人を分ける要素②
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