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女性の活躍推進の取組みとして、多くの企業が「女性社員のネットワークの構築」を掲げています。ネットワークには、他社・異業種交流や外部団体への派遣などの「社外ネットワーク」と自社の女性社員間で行う「社内ネットワーク」があります。今回は、「社内」に焦点を当て、組織および女性社員双方が持続的に効果を享受できる社内ネットワーク構築の秘訣をご紹介します。
2017年5月30日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
近藤美樹
女性社員社内ネットワークの成功の秘訣
女性社員社内ネットワーク主な取組例
企業の取組みを調べてみると、下記の表の通り、目的別におおよそ3つに分類されることがわかりました。
①は、普段接点のない女性社員同士がお互いを知り合うことに重点が置かれています。テーマを設定した意見交換会や懇親会の実施、イントラネットや社内報でロールモデルとなる女性社員を紹介するなどの取組みがあります。
②は、女性社員のスキルアップやキャリア開発に役立つイベントの実施が該当します。外部講師による講演会や自社の役員が講師となる社内勉強会などの取組みです。また先進的な企業では、女性社員を職種や専門で細分化して、個別ニーズに応じた企画を実行しています。
③は、課題解決型プロジェクトワークと言えます。女性活躍推進の先進企業である日本IBMは、「当事者が解決策を提言するのがIBM流」として、1998年からJapan Women’s Councilが③の取組みを行い、数々の施策が実行されているそうです。
まずは①から着手し、順に②③へと展開していく企業もあれば、①~③すべてに同時に取組んでいる企業もあります。
女性社員ネットワーク施策:成功の秘訣
女性社員の社内ネットワークを、社員の意識や組織風土に影響を及ぼす持続的かつ効果的な施策とするためには、次の5つの要件を満たすことが必要です。
1. 経営層の理解と支援が獲得できている
経営トップや経営幹部(特にビジネス部門)がスポンサーとなる
経営層が活動に関わる
2. 女性社員ネットワークの存在意義が社内で理解されている
管理職や男性社員の理解が得られている
女性社員が納得している
3. 目的やミッションが明確である
誰に対して、どのような価値をつけるのか?
ビジネスに対してどのようなインパクトがあるのか?
4. 運営体制と役割・責任(アカウンタビリティ)が明確である
例:人事は事務局機能となり、企画・運営はネットワークの主要メンバーに委任するなど
5. 継続的かつ一貫性のある活動となるための仕組みがある
打上げ花火で終わらないよう、マイルストーンごとに目標を設定しPDCAを回す
いかがでしょうか。「女性社員を集めてイベントを行う」と捉えると、一見難易度の低い施策のように思えます。しかし、効果的な施策にするには、ステークホルダーの巻込みや体制づくりなどの基盤を整えたうえで、自社の目的や対象者にあった企画が必要です。先進企業の取組みをそのまま真似たり、「とりあえずイベントを開催しよう!」と実行に走ったりするのはキケンです。目的や対象者が定まらないイベントは、総花的になり、結果的に誰にとってもピンとこないものになります。また、経営層や管理職が女性社員のネットワークの存在意義を理解していないと、女性社員が仕事を離れてネットワークに参加すること自体に心理的負担が伴います(本末転倒です)。
自発的なネットワークが生まれる条件
最後に、会社がお膳立てするのではなく、自発的に女性のネットワークを育むための条件をご紹介します。一つ目の条件は、対象者が「点」ではなく「面」の接点をもつ、つまり1回会って終わりではなく、継続的に接する機会を提供することです。二つ目の条件は、対象者が表面的な関わりではなく、苦労や達成感を分かち合うような深い関わりをもち、信頼関係が築ける場であることです。
Value&Visionでは、単発ではなく「継続的」(期間が数か月に亘る)であることにこだわって研修を提供しています。当社の研修は、受講生同士の「面」での接点となります。また、受講生はタフなグループワークを通じて、苦労や達成感を分かち合います。結果として、研修が触媒となり、受講生たちは自発的に地域や職種を超えた女性社員のネットワークを築いていきます。女性活躍推進の施策を検討される方には、研修という場が、やり方次第で良質かつ持続可能なネットワークの構築の場になりうる、ということをぜひ認識していただきたいと思います。
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Value&Vision の徳田亮と近藤美樹がグローバルリーダー育成、ダイバーシティ&インクルージョン推進、女性リーダー育成、経営コンサルティングなどに関する内容を、エッセイ、分析、対談など、さまざまな形式で綴ってゆきます。