top of page
経営視点から斬る「不祥事」

Photo by PIXTA

「売上や利益を積み上げるのは、文字通り賽の河原で小石を積み上げるような、毎日の地道な作業です。われわれは過去の営業経験からそれを身に染みて感じています。しかし、逆に売上や利益を吹き飛ばすのは一瞬にしてできます。それが不祥事の恐ろしさです」

 

「リーダーとして地位が上になればなるほど、より大きな意思決定にかかわるようになります。その分、一人一人の持つ、所属組織に対する破壊力は増します。次世代リーダーには、不祥事に対するしっかりとした心構えが必要になります。大事なことは、その心構えは『結果を出す』ことよりも優先する、ということです」

 

これは、次世代リーダー育成研修でも女性リーダー育成研修でも共通して申し上げるValue & Visionの決まり文句です。毎年、不祥事を研修の題材にするたびに、テキストを最新事例に更新します。すると、新事例が雨後の筍のように出てくるのに驚きます。三菱自動車と東芝は記憶に新しいところです。さらに過去を振り返ると、業界全体あるいは個別企業の単位で、不適切会計・粉飾決済、データ改ざん、偽装表示、贈収賄などの不祥事が広範囲で発生しています。

 

日本の「不祥事」には、多くの場合、3つの共通点があると思います。

  1. 「結果」「功」をあせって、正当な手続き、プロセスを飛ばしている

  2. 「わが社の常識」が外部からみると信じられないくらい「世間の常識」とずれている

  3. 必ずしも私腹を肥やそうとしていない。疑似「会社全体主義」とも言うべき現象で、「お国のため」ならぬ「わが社のため」「わが部門のため」の旗印のもとに行うので、罪悪感がマヒしている


恐らく最近の三菱自動車、東芝にはこの3つのすべてが当てはまるのではないでしょうか?

 

三菱自動車の実態を週刊新潮(2016年5月5・12月号)で垣間見ることができます。三菱グループの「天皇」と言われる三菱重工相談役が、実の息子さんである三菱自動車の社長に伝えたいこと、として次のような引用をしています。

 

「今回、試験をしてデータを出した人たちは(公表燃費性能数値の)コマーシャルのつもりでやっているから、罪の意識はないんだぞ、だからむやめに咎めちゃイカンぞ、ということを言いたい。僕が社長だったらね、“ああ、これは愛社精神の指導が間違ったんだな”と社内的には善意なんだろうと。その人達もね、燃費を良くすれば1台でも多く売れるんじゃないかと考えたんでしょう。それで自分たちの給料が上がるわけでも、地位が上がるわけでも、“あの人が良いエンジンを作った”と褒められるわけでもない。三菱自動車のことを一生懸命考えて、過ちを犯したんだから」

 

この発言を前述の3つの共通点に照らしてみます。1.に相当するのが「1台でも多く売ること」、2.が「燃費性能の公表がコマーシャルである」という認識、3.が「三菱自動車のことを一生懸命考えたことで、自分たちの給与や地位のためではない」ということ、と解釈できます。

 

この発言をみなさんはどう捉えたでしょうか? 共感できますか? それとも反発を覚えますか? コンサルタントとしての肌感覚で言うと、日本企業の管理職の方々の中には、「共感する部分がある」と感じられる方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?

 

Value & Visionは考えます。次世代リーダーにとっての学びとして、大切なことは、次の2点です。

  • この発言は、発言者の所属する企業の、現在の企業文化・企業風土を象徴しているということ (少なくとも第三者にはそう受け取られる可能性が高いこと)

  • この発言が、企業トップから発せられたとすると、それが、現在の企業文化・企業風土を、未来に向かってさらに継承、強化する役割を果たすということ

 

本サイトでご紹介しているValue & Visionのコンテンツ・ブロック(オリジナル研修コンテンツ)には「不祥事」という科目はありません。ただし、次の2つのコンテンツ・ブロックの中で「不祥事」を扱っています。これらの中では、上記、企業文化・企業風土と「不祥事」の関係について詳しく取り上げています。

 ①意思決定
 ②ダイバーシティ&インクルージョン

 

①意思決定:ビデオのケースを見ながら次のポイントを受講生と一緒に考えます

  • 意思決定のメカニズム:「問い」「選択肢」「判断基準」の関係を整理して、具体的な意思決定事例に当てはめてみます

  • 意思決定における「価値観」の役割:「判断基準」を考える上では「価値観」という主観的要素が重要なカギとなります。換言すると、「ロジカル・シンキング」を行えば、自動的に答えが見つかるというものではありません。ここでは「判断基準」と不祥事のつながりについて考えます

  • 「価値観」と企業文化・企業風土との関係:価値観はいい意味でも悪い意味でも、企業文化・企業風土と密接にかかわっています。「わかっちゃいるけどやめられない」のはそのためです。マズローの欲求5段階説を引きながら、議論を深めます。

  • リーダーの役割:不祥事を防ぐには何をすべきか、を考えます

 

②ダイバーシティ&インクルージョン:次のポイントを順に論じます

  • 多様性を受容することのメリット:「攻め」と「守り」の2つに分けて論じます

  • 「コンプライアンスの強化」:「守り」のメリットのひとつとして取り上げます。その中では、異端が「わが社の常識」に待ったをかけるメカニズムについて考察を加えます。ちなみに、先に挙げた三菱自動車の例で、この異端の役割を果たしたのが提携先の日産自動車でした。

  • リーダーの役割:ダイバーシティ&インクルージョンにおける具体的アクションについて考えます

 

今回は「不祥事」というトピックを取り上げました。また、その関連で、Value & Visionにおける研修の2つのコンテンツ・ブロック、つまり「意思決定」と「ダイバーシティ&インクルージョン」についても言及しました。今後、コンテンツ・ブロックについては、全体像や個々のブロックの内容についても本ブログでご紹介していきたいと考えています。

 

*コンテンツ・ブロックの内容は当サイト「人材育成」のページの下部のタブ「研修コンテンツ」をご覧ください

2016年5月21日

投稿者:

コラム

カテゴリ:

徳田亮

経営視点から斬る「不祥事」

コラム

アーカイブ

​カテゴリー

コラム

Value&Vision の徳田亮と近藤美樹がグローバルリーダー育成、ダイバーシティ&インクルージョン推進、女性リーダー育成、経営コンサルティングなどに関する内容を、エッセイ、分析、対談など、さまざまな形式で綴ってゆきます。

bottom of page