Photo by Rika Otsuru, MyStyleVacation.com
先日、バリアフリーのコンサルティング会社、株式会社ミライロの代表取締役社長 垣内さんの講演をおききする機会に恵まれました。学び多きお話の中、特に印象に残ったお話は、次の3点です。
私たちが暮らす環境は、マジョリティ(多数派)にあわせた結果としてできあがっている。
障がいをもたない人は、障がい者に接したとき、「見て見ぬふり(無関心)」か「おせっかい(過剰支援)」の両極端の対応をしがち。そうなるのは障がい者のことを知らないから。
バリアフリーやユニバーサルデザインの普及には、「社会貢献」と「経済的効果」の両方の観点からの訴求が必要。「社会貢献」目的だけでは、企業の関心は広がらない。
上記3つは、Value&Visionが取組んでいる日本企業のジェンダーダイバーシティ推進(女性の活躍推進)上の課題に通じています。ジェンダーダイバーシティ推進の課題を、上記1,2,3に対応させてあげると;
現在の職場環境は、多数派である男性にあわせてつくられてきた。従い、少数派である女性にとって不便なことが存在する。しかし、多数派がその不便さを実感する機会はほとんどない。
男性が多数派である職場では、男性管理職の女性部下(少数派)への対応が、「見て見ぬふり」か「おせっかい」になりがち。いずれの対応も、女性部下の向上心や成長の妨げになる。
「見て見ぬふり」になるのは、「女性だけを特別扱いをするのは逆差別になる」という思いや、「個人的なことを尋ねるのはセクハラになるのではないか」という怖れから。上司からの能動的な声かけがないので、女性部下も悩みを相談したり、フィードバックをもらったりすることを躊躇してしまう。
「おせっかい」は、女性を無意識に「保護すべきか弱き存在」と位置付け、女性部下の責任や仕事の負荷を軽減するという行動となる。難易度が高くやりがいのある仕事に挑戦する機会が与えられない結果、女性部下は現状に安住してしまったり、自分は期待されていないと感じてやる気を失ったりする。
「見て見ぬふり」も「おせっかい」も、悪意からではなく、男性管理職が女性部下の意向やニーズをつかめないゆえの「とまどい」に起因することが多い。
企業にとってのジェンダーダイバーシティ推進の目的が「社会貢献」の一環である限り、必要最小限の取組みに留まりがち。企業にとって「経済的効果」、つまり売上や利益への貢献があると認識されれば、経営戦略の一環として、本気かつ継続的な取組につながる。
垣内さんは「ハード(環境)を変えるのは難しい。だからこそ、まず人々のハート(意識)を変えることが重要」とおっしゃいました。まさに、当社のダイバーシティ&インクルージョン研修は、女性受講者の能力向上と併行して、女性、男性、双方の受講者の意識(ハート)変革にも焦点を当てています。「管理職向け研修」では、女性部下への接し方にとまどっている男性管理職に対して、グループワークや演習など「体験」を通じて、参加者が自ら気づきを得る場を提供しています。(2016/4/7のブログで研修事例として紹介したクライアントのインタビュー記事で、男性管理職受講者の意識の変化の様子をご覧いただけます)
これからも、私たちが貢献できる分野で、「ハートを変える」ための活動を続けていきます。
2016年5月11日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
近藤美樹
ダイバーシティ&インクルージョン:バリアフリーの視点からの気づき
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Value&Vision の徳田亮と近藤美樹がグローバルリーダー育成、ダイバーシティ&インクルージョン推進、女性リーダー育成、経営コンサルティングなどに関する内容を、エッセイ、分析、対談など、さまざまな形式で綴ってゆきます。