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経営視点から斬る「M字カーブ」②

前回はM字カーブについてご説明しました。特にM字の前半、つまり谷に向かう最初の落ち込み部分について考えてみました。今回は、M字の後半、谷からの立ち上がり部分について考えてみます。

 

上記は男女の就業状況の面積グラフです。左が女性、右が男性で、それぞれの全体の四角が女性、男性の人口を表しています(それぞれ5,632万人、5,146万人)。横軸は年齢のレンジです。隣り合わせに並んでいる数字は、○○歳以上○○歳未満と読んでください。例えば、30、35とあるレンジは、30歳以上35歳未満という意味です。レンジの幅は、左グラフは男性全人口、右グラフは女性全人口に占める年齢レンジ人口の比率を表しています。例えば、男女ともに一番幅が広いのは65歳以上で、人口が最多のレンジであることを示しています。縦軸は、4つの就業状況のカテゴリーで分けてあります。グラフの下部分から順に次のようになっています。

  • 正規雇用

  • 非正規雇用

  • その他

  • 仕事なし


元データの注によると、3番目の「その他」には、「会社・団体等の役員、自営業主、家族従業者、内職、その他、勤めか自営か不詳及び勤め先での呼称不詳を含む」とのことです。

 

正規雇用、非正規雇用というのは日本に独特の概念のようです。厚生労働省によると、グラフで使用したものとは別の資料で次のように説明しています。

  • 便宜的に、①期間の定めがない、②フルタイム、③直接雇用(労働者派遣のような雇用関係と指揮命令関係が異なるもの(間接雇用)ではない)のいずれも満たすものを「正規雇用」とし、それ以外の様々な雇用形態を「非正規雇用」としています(平成24年3月28日プレスリリース)

  • また、別の資料(平成24年度「労働経済の分布」)で、非正規雇用者の具体的項目として、「パート」「アルバイト」「派遣社員」「契約社員・委託」「その他」を列記しています

 

左のグラフの緑部分を見てください。女性の場合、25~30歳をピークに、正規雇用が低減し続けていることが分かります。右グラフで、男性において、25~50歳まで、正規雇用が高止まりしているのと対照的です。女性のM字の後半、右上に向かう立ち上がり部分(グラフで赤の濃い破線部分)は、非正規雇用が正規雇用の減少を、減少分以上に補てんしているから起きている現象なのです。

 

左右の男女のグラフの緑部分のみを抜き出して、別の面積グラフにすると次のようになります。女性の緑はピンクに色を変えてあります。

2016年5月2日

投稿者:

コラム

カテゴリ:

徳田亮

経営視点から斬る「M字カーブ」②



正規雇用者は男女合計で3,061万人です。そのなかで、女性対男性でほぼ3対7です。課長に昇進する年齢を仮に35歳~50歳でとらえる(下記注)と、女性は29%しかいません。非正規雇用者よりも正規雇用者から管理職が選ばれる可能性が高いと仮定すると、女性管理職比率が低くなるのはわかります。しかし、もし正規雇用者から男女五分五分のチャンスで管理職が選ばれているのならば、女性の管理職比率は、現状の11%ではなく、政府の掲げる目標値30%であってもおかしくはありません。(前々回ブログ ”経営視点から斬る「女性管理職比率」” で「日本における正規雇用者に占める女性比率もこのマジックナンバー、30%です」と申し上げたのはこのことです)


(注: 『労政時報』調査記事(2010/6/14掲載)によれば、調査対象の企業の平均値で、課長昇進の制度最短年齢は33.9歳、標準で39.4歳、実在者で45.1歳となっています)


【経営者にとっての示唆】

前回、女性のM字の前半、最初の落ち込み部分では、個社で退職者の「引き止め」が可能ではないか、と申し上げました。 そこでの論点は、次のとおりです。    

  1. どのようにして、退職しようとする女性社員の「引き止め」をするのか?今回、女性のM字の後半、2番目の立ち上がり部分について話をしてきました。ここに関する論点は2つあります。

  2. すでに30%存在する女性の正規雇用者からどうやって管理職を増やすか?

  3. 非正規雇用者として再雇用あるいは新規採用する女性社員をどう処遇するか?


3.に関して、企業によっては、退職者を正規で再雇用できるよう、制度やその運用を手直しする必要があるかもしれません。ただし、それ以外の点では、1,2,3に対する打ち手は共通部分が多いと考えます。


3つの論点に共通して、もちろん時短や託児所整備などの育児支援は重要な施策です。実際に取り組んでいる企業は多いと思います。しかし、仏を作るだけでは不十分で、「魂」を入れる必要があります。Value & Visionは、これまでのコンサルティング、研修の経験から次の4つの「入魂」のアクションが不可欠だと考えています。

  1. 経営幹部が、女性社員への期待を発信し続けること 

  2. 経営幹部/人事部が女性社員の中長期的なキャリア展望(企業内での可能性)を具体的に示すこと 

  3. 職場の上司が、日常業務の中で、管理職の魅力を体現し、しっかりと伝えること

  4. 女性社員が退職を申し出た場合、職場の上司/人事部が、「本当の」理由に迫り、退職回避の可能性を探ること (退職が回避できなかったとしても、女性社員の退職の真因を把握し今後の施策に活かす)


あとは、個社ごとにどうアクションをテイラーメイドしてゆくかの勝負です。経営幹部として、「ダイバーシティ推進室にお任せ」では山は動きません。「入魂」のアクションは、経営幹部のアジェンダとして是非ご検討ください。



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Value&Vision の徳田亮と近藤美樹がグローバルリーダー育成、ダイバーシティ&インクルージョン推進、女性リーダー育成、経営コンサルティングなどに関する内容を、エッセイ、分析、対談など、さまざまな形式で綴ってゆきます。

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