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前回のPart 1では「①プレゼン資料作成のステップ」についてお話しました。今回はPart 2、完結編です。
②プレゼン資料作成に役立つ『5つの対語』
我々がプレゼン資料を作成するとき、研修で受講者を指導するときに意識しているのは次の5つの対語です。それらは前に述べた「どう伝えるか」を強く意識した内容になっています。本ブログのタイトルには「基本」とありますが、プレゼン資料を作った経験が浅い人にはひょっとするとあまりピンとこないかもしれません。ある程度の経験者の方にむけて、1つでも2つでも参考になれば、という気持ちでご紹介します。
1.主張と理由
何かを主張したら必ず理由を述べる
次の2つの視点から、「主張」と「理由」が適切に述べられているかを確認する
全体の視点: プレゼン資料全体でのメインメッセージ(主張)とその理由
部分の視点: モジュール(段落に相当する区切り)やスライドごとのメッセージ(主張)とそれを証明するファクト(分析結果、インタビューコメントなど=理由)
2.抽象論と具体論
抽象論と具体論の両立を意識する
抽象表現をしたら具体例を示す (中途半端な具体例ではなく、「目に浮かぶ」程度の具体例。例えば、インタビューコメントや他社事例など)
具体的な項目が多数になると人間の脳の処理能力を超えるので、抽象概念で括って項目数を3~4程度に絞る (例えば、聴き手に提案する具体的なアクションを10個羅列しても、聴き手の頭には残らない。10個のアクションを「顧客のためのアクション」「会社全体のためのアクション」「自部門のためのアクション」と3つの項目に分類して示すと聴き手の頭に残りやすくなる)
3.自分と相手
自分の視点に加え、相手の視点を持つ(「相手の視点」には2つの意味がある)
「相手の視点」その1: プレゼンの聞き手(オーディエンス)を意識する。どの程度詳しい説明が必要なのか、どこを強調すれば響くのか、などを考える
「相手の視点」その2 : 会社や部門に提言を行う場合、自分から見た「べき論」のみを主張しないで、相手から見た「今ある状態になっている理由、今あることをやっている(やっていない)理由」を考える。そのうえで、相手の「理由」に真摯に向き合って論じる
4.一般論と個別論
一般論で始めてもいいが、それで終わらず、個別論にまで落とし込む
例えば、自分が目指すリーダーシップを語る場合、「リーダーとは人をリードして結果を出す人」のような一般論ではなく、次の例1,2のような個別論にまで落とす
例1: 自分の個別の「強み」を生かした「ならでは」のリーダーシップとはどういうものか
例2: 自分の部門、職場など、自分の個別の「舞台」で例1のリーダーシップをどう具体的に発揮するのか
5.論理と心意気
論理と心意気、両方を意識する
論理で特に大事なのはプレゼン資料全体における「骨太のロジック」。具体的には、「①プレゼン資料作成のステップ」で述べた「2.目次=ストーリーライン」がこれに当たる。「骨太のロジック」で特に意識すべきなのは、理由が理由になっているか、余計な情報が紛れていないか、語る順番が分かりやすいか、などの点。語る順番が分かりやすいかどうかは、発表練習をしてみて、スライドとスライドの間が、「ところで」「ところで」「ところで」というブツ切れの接続ではなく、「だから」「なぜならば」「例えば」「次に」など連続性のある接続になっているか、でまずチェックすることができる
自分への提言であっても、会社への提言であっても、論理だけでは聴き手に響かない。自分への提言では、宣言したことが美辞麗句ではなく、実行のコミットである、という意気込みが大切となる。会社への提言でも同様に心意気が大切な要素となる。つまり、第三者・評論家として提言しているのではなく、当事者・実行者として「自分がやります」という姿勢を示すことで、提言内容により強固な説得力が生まれることになる
プレゼン資料を作る場合、上記の『5つの対語』を意識することが大事です。ただ、もちろん、それだけではスライドは書けません。スライドを書く上では、スライド表現のテクニックを身に着けることも必要です。有名な「ワンスライド・ワンメッセージ」がその一例です。講義においては、スライドを書くテクニックやティップスについても、受講者がよく陥るクセを実際のスライド例とともにご紹介しています。
以上、プレゼン資料を作る際にご参考になれば幸いです。
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2017年2月12日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
徳田亮
プレゼン資料作成の基本 Part 2
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