Photo by photoAC
前回に続き、今回も厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に登録されている従業員1,001人以上の大企業を対象に分析を行いました。2017年と2021年のデータを名寄せして、女性係長比率と女性管理職比率の4年間の変化について見てみました。2017年と2021年ともに、女性係長比率と女性管理職比率両方を公表している467社が対象です(「異常値」と思われる企業を除外した社数です)。
【分析結果】
個社の散布図を見て下さい。対象467社の内、右上、77%の企業が女性係長比率、女性管理職比率ともに伸ばしています(数値が“0ポイント”の企業を含みます)。左下、両方の比率ともにマイナスとなった企業は僅か3%しかありませんでした。女性活躍推進は着実に浸透していると言えると思います。左上、女性係長比率は減ったが、女性管理職比率が増えたという企業が2番目に多く、13%でした。係長を課長に登用した結果、係長クラスが枯渇したのかもしれません。
2021年6月28日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
徳田亮
「伸び盛り業種はどこ?」:経営視点から斬る「女性の活躍推進企業データベース分析」2021年版②
対象467社を業種で括って、業種ごとの単純平均をプロットしたのが次のグラフです。業種はValue & Visionの判断で製造業を4つ、非製造業を7つの大きなカテゴリーに括ってあります。緑色の点と文字が製造業、黒色の点と文字が非製造業を示しています。ここからは次のようなことが読み取れます。
45%線に着目すると、「他サービス」以外では45度線の下にプロットされている。これは「他サービス」以外の全業種で、女性係長比率の伸びが女性管理職比率の伸びを上回っていることを示している (「他サービス」に含まれるサブカテゴリーは、宿泊、飲食、教育学習、運動娯楽、医療福祉法人、不動産業、BPO、派遣など)
女性係長比率の伸び、女性管理職比率の伸び、両方で「金融」が圧倒している。今回、グラフは掲載していないが、更に「金融」を細分化すると、銀行、生保、損保、証券・商品先物取引などのサブカテゴリーでもいずれも縦軸、横軸ともに高い数値を示している
女性係長比率の伸び、女性管理職比率の伸び、両方で「金融」に次いでいるのが「生活関連・その他製造」。ここに含まれるサブカテゴリーは、食料品、化粧品、医薬品、衣類、日用品など。一般的に製造業は工場を持っているので、女性の登用が進みにくいと思われているが、「生活関連・その他製造」は「金融」以外の非製造業の全業界をも凌駕している
次のグラフは、縦軸は上と同じ2017-2021年の女性管理職比率の伸びで、横軸を2017年女性管理職比率に置き換えたものです。分析からは次のようなことが読み取れます。
大まかに言うと、2017年当時に女性管理職比率が高かった業種ほど、4年間での比率の伸びが大きい (次に述べる「他サービス」を除いた業種の傾向線が赤色の破線)
「他サービス」は2017年には女性管理職比率が最も高かったが4年間の比率の伸びが鈍化している。今回、グラフは掲載していないが、「他サービス」のサブカテゴリーの中で、宿泊、飲食、教育学習、運動娯楽、医療福祉法人、不動産業などが「他サービス」の伸びの数字を引き下げている。コロナでビジネスが圧迫されたことが人事政策にも影響したのだろうか?
「他サービス」と対象的に女性管理職比率の伸びに拍車がかかったのが「金融」。赤の傾向線から大きく上振れしている。タイトルの「伸び盛り業種はどこ?」に対する答えとしては、圧倒的に「金融」ということになる。
以上、2回にわたって、4年ぶりの「女性の活躍推進企業データベース分析」の結果をお届けしました。分析からの示唆をみなさまの女性活躍推進活動のさらなる展開に活かして頂ければ幸いです。
コラム
アーカイブ
カテゴリー
コラム
Value&Vision の徳田亮と近藤美樹がグローバルリーダー育成、ダイバーシティ&インクルージョン推進、女性リーダー育成、経営コンサルティングなどに関する内容を、エッセイ、分析、対談など、さまざまな形式で綴ってゆきます。