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2016年06月30日および7月15日付ブログ『経営視点から斬る「女性の活躍推進企業データベース分析」業界比較③および④』をご参照ください。これらのブログでは、厚生労働省の「女性の活躍推進企業データベース」に登録されている従業員1,001人以上の大企業を対象に、正社員における「女性従業員比率」、「女性管理職比率」の2軸について、業界毎の単純平均値の比較を行いました。③では56業種という細かい網、④では11業種という粗い網をかけてそれぞれ分析しました。
前回のデータ分析からちょうど1年が経過しました。そこで最新のデータを用いて、再度同じ分析を行ってみました。予想どおり、1年間という短い期間内で、細かい網の業種、粗い網の業種ともに、グラフにおける大きな図柄の変化はありませんでした。従い、前回と同じグラフで、数字のみを置き換えて提示するのは、やめることにしました。
今回は、「女性管理職比率」に着目して、前回からの1年間の変化を、業界平均ではなく、個社ごとに見てみます。分析のベースは下記2点です。
①2016年の女性管理職比率と2016-17の女性管理職比率の伸びの関係
②11業界と2016-17の女性管理職比率の伸びの関係
前年度にならい、従業員1,001人以上の大企業を対象に、正社員における比率について分析します。①、②、それぞれ、今回と次回の2回に亘ってご紹介します。
ベースとなるデータは、次のとおりです。今回は1年間の伸びを見ているので、女性管理職比率を2年分公表している企業のみが対象となり、該当する企業は992社でした。
2017年7月10日
投稿者:
コラム
カテゴリ:
徳田亮
経営視点から斬る「女性の活躍推進企業データベース分析」女性管理職比率2016対2017①
【分析結果】
一見して横軸・縦軸に相関がないのは明らかです。実際R2は0.01%でした。つまり、昨年の女性管理職比率が高かったところがより比率を伸ばしているわけでも、その逆で低かったところがより伸ばしているわけでもありません。ただ、このグラフからはそれ以上の示唆を得るのは困難です。
そこで、もう少し示唆がとれるように、横軸・縦軸にレンジを設けて、そのレンジに何社の企業が該当するかを数えてみました。それが次のグラフです。
グラフの見方ですが、横軸・縦軸は前掲のドットグラフと同じです。横軸・縦軸をそれぞれ、5つ・4つのレンジに区切りました。面積は企業数を示しており、全体の四角形が992社です。
全体を見ると、まず横軸からは、レンジの幅見ることで、過半数(55%)の企業において、2016年の女性管理職比率が0%超5%未満だったことが分かります。また、0%という女性管理職が全くいない企業も多少(6%)存在することも分かります。さらに、政府が2020年の目標に掲げている30%に達している企業はごくわずか(4%)しかないことも読み取れます。
一方、縦軸からは、69%の企業で比率に変化がなく、25%の企業が数字を伸ばしている一方、マイナスになっている企業が6%あることが見て取れます。
横軸の5つのレンジを比較してみます。比率を伸ばすのに最も苦戦しているのは、想像どおり、2016年に女性管理職が全くいなかった企業です。また、数で全体の過半数を占める女性管理職比率0%超5%未満の企業については、薄緑部分が大きく、1ポイント未満の微増という企業が多いことが分かります。「1ポイント以上のプラス」という濃緑部分に着目すると、やはり、左2つ、つまり女性管理職比率5%未満の企業は、伸び悩みの傾向にあるようです。
分析結果で興味深いのは、最もプラスの企業(濃緑+薄緑)の比率が高いのは、2016年女性管理職比率が5%以上10%未満の企業だということです。1ポイント以上プラスという濃緑のみでも最も高い比率を示しています。「そこそこ」の%であることが、「伸びしろ」と「伸ばす下地」の両方を併せ持っているということでしょうか?
女性管理職比率10%以上30%未満、30%以上の2つのレンジは1ポイント以上伸ばしている企業が「5%以上10%未満」のレンジに次いで多い反面、マイナスとなっている企業の比率も高くなっています。「持てる者」の苦悩もあるようです。
過去1年間の分析なので、上記の傾向が今年に特有のことなのか、ある程度恒常的なことなのか、断定的なことは言えません。従い、上記のうちコメント部分はあくまで推測です。
次回は続編として、今回と同じ分析を、横軸を業界に変えて行います。特に苦戦を強いられている低比率の業界に着目してみたいと思っています。
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